昨年の新型コロナの影響で物流が滞り大きな打撃を受けたのが商社業界です。
なかでも5大商社と呼ばれる、伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅について直近12か月の業績を振り返り、
不況に強い企業はどこか?また長期投資に向く企業はどこか?を調査しました。
今、5大商社の株を保有している方、これから株保有を検討している方の参考になれば幸いです。
売上高営業利益率から見る不況時に本業で稼ぐ力
記事執筆時(2021年1月)から直近12か月の、各社の売上高に対する営業利益率(%)をグラフに整理しました。
単純な利益だけでは、ボーナスカットや資産売却などのマイナス要素も含まれ、不況に本当に強い筋肉質な体質かは見えてきません。
そこで、売上高営業利益率に着目し、この指標によって本業で稼ぐ力を見ることにしました。
これを見ると伊藤忠商事が頭一つ抜けているのが分かります。続いて三井物産、僅差で三菱商事と続きました。
グラフ中の赤線は、5社の平均値を示しています。3番手の住友商事は平均を下回る結果となりました。
丸紅に関しては、不況の打撃が大きかったのか営業利益率は大きなマイナスとなりました。
この結果から、5大商社の中で不況でも本業で稼げる企業は伊藤忠商事と言えそうです。
配当の面から見た長期投資に向く企業体質
左のグラフは直近12か月のEPS(円)を比較したものです。
右のグラフは2021年3月の配当利回り(%)を比較したものです。
どちらも赤線は同じく5社の平均値を示します。
EPS(収益性)で比較
EPSは1株当たりの純利益を計算しています。EPSは投資家にとっては大きければ大きいほど良い指標です。
なぜなら、配当は純利益から支払われるため、EPSが大きいほど配当として還元される可能性が高いからです。
また、EPSは収益性を見る指標でもあるので株価に大きく影響すると言われています。
グラフを見ると、伊藤忠商事、三菱商事、三井物産の順番で、住友商事と丸紅は平均値を大きく下回りEPSがマイナスとなっています。
EPSの面では、伊藤忠商事が最も収益性が高い結果となりました。
配当利回りで比較
配当利回りは、購入した株価に対し、1年間でどれだけの配当を受けることができるかを示す数値です。
配当を株価で割るので、どれだけ配当を出してくれるか、株価が異なる企業同士で比較することができます。
計算式 配当利回り(%)=1株当たりの年間配当金額÷1株購入株価×100
グラフを見ると、三菱商事、僅差で住友商事、三井物産と続きます。ここから平均を割り込み丸紅、そして伊藤忠商事が最下位となりました。
配当だけで考えると、三菱商事が最も良い結果となりました。
企業体質から見て長期投資に向くのは?
EPSと配当利回りのグラフを見比べて興味深いのは、最も収益性が高い伊藤忠商事は配当利回りが他社と比較して良くないという点です。
このことから、伊藤忠商事は株主還元よりも自社への投資を優先する成長重視の体質と言えそうです。
一方、EPSが下から2番目の住友商事は配当利回りが上から2番目であったことから、収益が悪化しても株主への還元を重視する体質と言えそうです。
長期投資先として考えた場合、高配当を狙いに行くのが定石なので、配当利回りが最も高く、収益性も高い三菱商事が適していると考えました。
株を購入するならどの企業が割安か?
PER (倍)を各社で整理しました。株価は記事執筆時点の2021年1月25日の株価を用いています。
計算式 PER(倍) = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
PERは、今の株価が割高か割安かを判断する指標で、グラフを見ると三井物産が最も割高、次いで三菱商事、伊藤忠商事と続きます。
住友商事と丸紅は、EPSがマイナスであったことから計算不可となっています。
これより、現在の株価から見れば伊藤忠商事が最も割安と言えます。
まとめ
商社全体が大打撃を受けた2020年の5大商社の業績を検討した結果、以下の通り結論を得ました。
調べてみると意外な気づきも多かったので、今後他業界の企業についても調査していきたいと思います。
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