昨年2020年8月、かの著名な投資家ウォーレン・バフェットがカナダの大手金採掘会社であるバリック・ゴールド(GOLD)の株を保有していることが発表され大きな話題となりました。
なぜ大きな話題になったかというと、バフェットは「金は何も生み出さない」としてこれまで金に対し否定的な見解を示していたからです。
大手の金採掘会社は複数ありバリック・ゴールドの他に業界最大手のニューモント・コーポレーション(NEM)があります。
このバフェットが金鉱株(金採掘会社の株)を買ったというニュースを聞いた時、気になったことがありました。
バフェットはなぜ業界最大手のニューモントでなく、2番手のバリック・ゴールドを買ったのか?
今回はこの謎に少しでも近づきたく、金鉱株の銘柄ニューモントとバリックゴールドの過去数年の業績を比較検討してみました。
金鉱株投資に興味あるという方はぜひご覧ください。
そもそも金鉱株が注目される理由は?
「金(ゴールド)の価格が上昇する局面では、金鉱株の株価が大きく上昇する」と言われます。
これは金の採掘コストは一定ながら、金価格が上昇した分だけ採掘企業は利益を得られるため、株価が大きく上昇するということのようです。
実際、世界最大の金ETF(GLD)の価格と金鉱株ニューモントの株価の推移を比較してみました。
金価格と金鉱株株価の関係
1年間で1.4倍の上昇
1年間で1.9倍の上昇
比較期間を2019年7月~2020年7月の1年間で見た場合
金ETF(GLD)の価格は133.2ドルから185.4ドルと1.4倍の上昇。一方、金鉱株ニューモントの株価は36.5ドルから69.2ドルと1.9倍の上昇となりました。
確かに金価格より金鉱株の株価上昇率が高いことが確認できました。
金鉱株購入の際は、株価の下落局面では逆に金より金鉱株の方が下落率が大きいということは覚えておく必要があります。
ニューモントとバリック・ゴールドの会社概要の比較
2019年時の時価総額と売上高について金鉱株比較しました。
売上高は両社とも10000百万ドル弱(1兆円程度)で横並び、時価総額はニューモントの方が上ですね。
また、2019年に限らず配当金はニューモントの方が多く出す傾向にあります。
ニューモントとバリック・ゴールドの業績比較
続いて2つの金鉱株銘柄の業績をキャッシュフローの観点から比較したいと思います。比較対象のキャッシュフローは下記2パターンです。
過去数年の傾向とバフェットが投資した2020年の両方を見ていきたいと思います。
- 2016年~2019年の年度別キャッシュフロー
- 2020年の4半期ごとのキャッシュフロー
金鉱株銘柄の過去数年の比較
2016年から2019年にかけて、どちらも比較的似たような動きをしています。
安定して営業CFのプラス分が投資CFのマイナス分を上回っている、つまりフリーキャッシュフローがあることから両社とも健全な財務体質と言えそうです。
両社とも投資を行いつつ(投資CFがマイナス)も、同時に借り入れの返済を実施(財務CFがマイナス)していることが見て取れます。
金鉱株銘柄の2020年の比較
2020年に入ると少し動きが異なってきます。
バリック・ゴールドは引き続き投資を行っているのに対し、ニューモントは収益が悪化したのか資産を売却している(投資CFがプラス)ことが分かります。
金価格が上昇しているにもかかわらず収益が悪化というのは何か特別な理由があるのかもしれません。
バフェットのバリック・ゴールド株の保有が発表されたのが8月なかばであり第3四半期にあたりますが、2020年に入りニューモントの収益性の悪化材料を懸念して、バリック・ゴールドを選んだ可能性があると推測しました。
まとめ
今回は「バフェットはなぜニューモントでなくバリック・ゴールドを選んだのか?」をテーマに、両社の業績から考察してみました。
結論としては、「2020年のニューモントの収益性の悪化を懸念した」というのがバリック・ゴールドを選んだ理由の一つではないかと推測しました。
もちろん投資の神様ですから素人では考えつかない様々な情報を加味したと思います。当時はバリックゴールドが割安だったとかがあるかもしれません。
個人的には同じ採掘会社でも、以前検討したビットコインのマイニング企業とは財務体質に大きな違いがあることが知れて勉強になりました。
扱うものが金(現物)とビットコイン(デジタル)で違ったり、業界の成熟度にも大きな違いがありますね。
ビットコインマイニング企業について気になる方はぜひこちらの記事をご覧ください。
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